2021年 12/21・12/29 本多劇場『風桶』:梅棒

http://umebou13th.dynamize.net/



今回の公演は、第5回公演の再演。
まあ、その頃は梅棒なぞ全く知らなかったので、
自分の中では完全新作のように楽しめたのだが…






〇ストーリー

タイムマシンを発明した未来の科学者。
江戸時代に行った兄を追うついでに、
現代(日付は公演日に準ずる)に立ち寄って、大ファンのバンドのラストライブを見る。
その後、江戸に行く時に、バンドの3人も一緒に江戸へ!
バンド3人+科学者の計4人が江戸にて巻き起こる人間模様…
って感じかな。




話は分かりやすく、面白いと言えば面白いが、
物足りなさもあったかな。
「現代の人が江戸にタイムスリップして起こる諸々」が、
おおよそ、こういう設定で起こり得る想定内のものばかりなんだよなー。
それが結果的に分かりやすさに繋がっているとは思うが…




〇田中一家

今作の悪党一味。
4人いる。

梅棒の舞台には明確な悪役、敵役がいて、そいつらとのバトルになる事が多い。
今作ではそれが田中一家なのだが、今までの舞台と違うのは、
そいつらが弱い、という事だ。
序盤からちょいちょい登場して悪さをするが、
ほとんどのシーンで誰かしらに負けている。
これは今までに無いパターンだなー、とは思ったが、
じゃあそれが面白いか?と言われたら、否かなー。


んで、物語が2/3消化したあたりで、この悪党一味が、ある力を得る。
それにより、強くなってカッコよくなるわけだが、
これにより俺は面白いと感じた。
そう、「カッコいい=面白い」という感覚が俺の中であるのだなーと思った。
これだよ俺の求めてたのは!


あと、力を得て走っていく様が、昔好きだったZ団を連想させて良かったなー。
Z団は和物の舞台や、それに付随した殺陣が多く、
その辺も今回の舞台と共通しており、懐かしい良さを感じさせた。



力を得た田中一家も、当然ながら最終的には
正義の町民たちにやられてしまうのですが、

今まで弱かった→力を得て強くなった、

というプロセスを踏んでるため、町民側にも、強くなるプロセスが欲しいのに、
その辺が希薄なのも×。
ただ単に1対3とかの数の暴力で対処してるように見えて、
それはそれで説明通ってるけど、イマイチ弱いし、
何よりエモーショナルではないし…


途中で田中一家のボスが、江戸の町民(味方)側についた時に、
残った田中一家が、ボスが死んだと思ってたのは、良く分からなかったなー。
ただの歌詞ハメのギャグ?




〇使われた曲がイマイチ

今回の舞台は、舞台が和のせいか、
氷川きよしや『千の風になって』、『神田川』といったゆっくりした曲、
また、それとは別にヒップホップ系の曲が多いように感じられた。
どちらも俺の好みには合わず、本公演で一番不作だったまである。

いつもなら、公演を見た後にツタヤで借りる曲をピックアップするってのが
一連の行動なのだが、今回は借りたいと思う曲が1曲も無い…
唯一良かったのは、やべっちの歌目当てでFNS見た時に
ちょっといいなーって思った、AKBの『根も葉もRumor』やったくらいか。
あと、劇中バンドのオリジナル曲はかなり良かったけど、
借りれないからさーwww


やっぱり、音楽は梅棒の舞台の素晴らしさを構成する一要素なので、
そこがイマイチだったのは痛いなー。
やっぱり音楽と共に感動があるからさー。




〇オープニング、エンディングのダンスがいつもと違う


まずオープニングが短い。
いつもの半分くらい?
ワンコーラスで終わってボリューム不足。
全員紹介したのかも疑わしいレベル
(2回目見て全員紹介は確認した)。


そしてエンディングが、いつものオープニングのようなカッコイイ系。
だが、基本的に従来は、オープニングはカッコよく、
エンディングはハートフルなテイストで収まってる事が多い。
そこで幸せ感が倍増されるのが良いのだ。
なのに、エンディングでストーリーもいい感じなのに、
カッコいい系なのは、不似合いとしか言いようがない。
さらには映像も、1人1人のキャラ名と役名を紹介するという感じに
あまりなってなくて、なんだかなー。
とにかく、従来の良かった要素が無くなっている。


パンフを見たら、これは意図的だと分かったが、
それを踏まえたうえでも、従来の方が良かったです。





〇主役は誰?

俺は、舞台を見終わって、今作の主役は、
タイムマシンを発明した科学者と、バンドのボーカルの二人だと思った。
科学者は冒頭から登場して、終わりに至るまで、
作品のストーリーを構築する重要な役だ。
バンドのボーカルは、腕っぷしも強く、
バンドメンバーの3人の中で明らかに一番目立っている。
この2人と考えるのが自然、どちらか1人にするなら、バンドのボーカルが主役かな。



だが、舞台を見る前は違った。
この舞台のメイン画像は、江戸の町民のメインキャラ、
梅棒の野田さんが演じる傘売りと、
その恋仲になるヒロイン、元乃木坂の渡辺さんが演じる芸者がバーンと映っている。
野田さんはこれまで主役、メイン役が多く、元乃木坂なんてのも、
大体メインのヒロインと相場が決まっている。
パンフレットの役者紹介も、最初が野田さんで、次が渡辺さん。
どう見ても、この二人が主役です!って感じの構成になっている。



この食い違いは何なのだ。
分からないが、言えるとすれば、舞台側で主役に据えた傘売りと芸者が、
魅力不足であった、或いは印象に残りにくかった、という事だろう。

この舞台には、傘売りと芸者以外にも、様々な江戸の町民が登場する。
その中では、この二人が一番目立っていた。
それは間違いないだろう。
ちゃんとそれらしい出番もあったし。


だが、舞台全体で見たら、主役って感じじゃないんだよなー。
物語の視点が科学者側で進んでいくからってのが大きいのかなー。
あと、この2人が恋仲になるのが早すぎる。
うちパパのような恋愛展開を期待したのに…
この早さが、軽く見えるんだよなー。





〇町民について

前述した、様々な江戸の町民。
正直、魅力薄だったかな。
芸者は3人いるが、メインの渡辺さん以外は、
「渡辺さん以外の芸者」という映り方しかしなかった。
それぞれの個性も、あるけど、薄い。


百姓は、百姓とその嫁が出てくるけど、これもまあ別に。
個性はあるが、物語に大きく関わらないので、居なくても良い。


それ以外の働く町民として、主役級の前述の傘売りの他に、
大工と飛脚が出てくるが、これも別になあ…
うまく言えないが、
町民の役割を演じる存在というか、記号でしかないって感じ。
もちろん、こういう普通の町民がいるからこそ、
外部(未来)から来たバンドや科学者が活きるというのもあるが…


火事のシーンで、町人が火消になって活躍するんだけど、
美味しい所はバンドメンバーが持っていっちゃうんだよなー。
あそこで火消がメインで活躍していたら、まだ違ったかもしれない。







〇布袋ランボルギーニ(遠山晶司)

個人的には主役だと思っている、バンドのボーカル兼ギター。
最大の特徴は、そのカッコよさだろう。
過去の公演で遠山さん自体は何度も見ているはずだが、
役柄の美味しさと、前髪の感じが非常にカッコよい。
ケンカが強いはチート設定。
ライブパフォーマンスも〇




〇ミノ・オカモト(鶴野輝一)

バンドのベーシスト。
バンドの解散理由が「自分探し」だったのだが、
江戸に来ると、なんと芸者になっている!!!
まさかの性転換に「自分探しってそういう事かー!」
と、良いフリが利いてるなーと思った。


この役だけ、ひこひこさんという役者のダブルキャストで、
しかもひこひこさんは、12日ある東京公演の3日だけという少なさで、
おそらく鶴野さんが参加出来ない日の穴埋めなんだろう、
こんな端役のために観に行く日を調整するまでもない、と、
2回とも鶴野さん回にしたのだが、
こんな美味しいコメディー役となると、ひこひこさん回も見たかったなー。
しかもひこひこさんは、かなりのパントマイマーみたいだからさー。
さらにひこひこさんの回、普通に鶴野さん客席で見てたりしたみたいだしwww




〇黒柳ムーン(正安寺悠造)

バンドのドラマー。
医師免許を持っているという設定から、
江戸に来ても医者の知識で活躍する。
この辺は上手い設定だと思ったなー。
実際にケツメイシとかGreeeenとかいるからさー。
サロンパス的スプレーには笑ったw


劇中では実際にドラムを叩くシーンもあるけど、
そのどれもが印象的でカッコよく、ジーンときます。
バンド経験とかあるのかな?
特にエンディングの『アンビリーバーズ』が魂を揺さぶられた感あり


この役者さん、前回の梅棒番外公演では、ボクシングジムの会長という、
年寄り役をやっており、今回の公演とはかなりかけ離れていたため、
事前にパンフを見ていたのに、全く気付かなかった。

falconclaw.hatenablog.com




前回公演では、年寄り役故に、イケメン的カッコよさはなかったが、
今回の公演では、バンドの布袋ランボルギーニのようなカッコよさを見せるシーンもあり
(実際似てて一見区別つかないシーンもあった)、
前回との違い含めて良かったです。




〇田部右衛門(eat)

百姓役。
びっくりするくらい、百姓役がピッタリって感じの田舎臭い顔。
全くイケメンではないので、ある意味貴重というか…
これで嵐の振付とかしてるみたいだから、凄いわー。




〇おねつ(hirokoboogie)

百姓の嫁役。
ダンスがキレキレで印象に残ったが、病弱設定もあり、
目立ち具合はイマイチ。
他の役で是非見たいねー。





〇田中百仁華(YOU)

悪役一味の唯一の女性。
演じるYOUさんは、梅棒では相当お馴染みの役者さんだが、
今作でも、そのカッコよさをいかんなく発揮。
衣装の感じと、背格好のバランスが良く、
特に終盤での強くなってからのお姿は素晴らしいです。




〇田中亜薔薇(長谷川敬夕)

悪役一味の人。
パンフには「ジゴロな色男で、女を虜にし、貢がせる悪い男」と書いてるので、
その辺の行動を期待したが、そういったシーンは特になし。
フレーバーテキストか?!




〇吉田テスタロッサ(梅澤裕介)

主人公と言ってもいいメインの科学者。
俺の中のメイン主人公、布袋ランボルギーニがカッコよさに振り切れてる分、
こちらはコメディー担当という所か。
そのキャラクターがドタバタを生み出し、ストーリーを動かします。




〇吉田ベルリネッタ(塩野拓矢)

先に江戸時代に来ていた、追われる身の科学者の方。
吉田テスタロッサの兄。
始めは潜伏しているが、その科学技術で悪役一味を洗脳し、
主人公達と敵対。
いわゆるボスのような存在になります。
その時の、ベガみたいに拳を握ってビリビリくる悪役演出が好きすぎる…
ベタだけど、とてもカッコよいです。


敵役故に悪者のように思えますが、
実はタイムマシンをメインで開発していたのは彼の方で、
その手柄を吉田テスタロッサに横取りされたというバックボーンがあります。
ただ、その辺は舞台で描かれているとはいえ、ノンバーバルという事もあり、
分かりにくい印象だった。
こっちは事前にパンフ読んでたから知ってたけど、それでなかったらきつかったかも。


タイムマシンのパーツを奪うために、ミッションインポッシブルのテーマに合わせて、
何度もトライするも失敗するシーンがあるんだけど、あそこは凄く良かったなー。
普通に面白さが振り切れてるし、だんだんテンポが良くなっていく点、
いちいちイントロで同じダンスを踊ってるのが〇。
最後の足を痛めるのがバリエーションとして、オチとしてよかったなー。
そして、そこから俺の大好きな悪党一味を洗脳するカッコいいシーンへと
続いて行くのがいい。
「面白さ」という要素で最高潮に暖めてからの、
カッコよさへの切り替わり…最高すぎます。
今までの梅棒に無いパターンだよね、多分。


俺が見てきた塩野さんの役では、この役が一番好きだねー。
基本悪役顔だとは思うけど、顔は綺麗だし、
カッコいいシーンとコミカルなシーンがそれぞれあって、
見せ場が多く素晴らしいキャラクターです。







そんなところで、1回目見た時は、イマイチ感も強かった本作品ですが、
2回目見たら、めっちゃ良く感じられた。

単純に2回目だから、1回目より細かい所に目が行くってのもあるし、
ストーリーを把握してるから、1回目の時の「この先はどうなるんだ?」という
ストーリーを理解しようという意識を割かなくていいってのもあるが、
初回時以上に登場人物の関係性に目がいき、
特にメインヒロイン以外の芸者の恋愛関係なんかは、
初回の時はろくに見えてなかったから、
なるほどなーって感じた。


あと、1回目でそこまで楽しめなかったのは、
風桶の前にやった「ラヴ・ミー・ドゥー」が面白過ぎたので、
あのクオリティを求めてしまったというのもある。
2回目は、ラヴ・ミー・ドゥーとの比較、みたいな感覚は一切無く見れたからさー。




やっぱりこの作品の最大の面白ポイントは、悪党一味が操られだしてから。
それが分かった上で見ると、これ以降のシーンのカッコよさが素晴らしく、
2回目観賞での面白さに繋がった感じだ。
十手、三節棍、棍という三種の器械の使い分け、
それまでと明確に違う表情の変化(特にYOUさんが素晴らしすぎる)など、
見どころが多い上に、椎名林檎『NIPPON』が流れるクライマックスのシーンでは、
ライティングを含めた、演出のカッコよさに涙せずにはいられなかった。




また、いくつか台詞のあるシーンがあるのだが、
1回目よりかなり変わってるというか、足されてる印象だった。
もちろんそこまで正確に覚えてるわけではないので、
あくまでもそういう印象ってだけで、気のせい率もとことん高いが。


冒頭の吉田テスタロッサによる未来クイズなんかは、
もちろん毎回違っても良い部分だが、
他にも「あれ?前と違う?」と感じる部分もあり、
芸者の市丸が実際に歌うシーンは、
明らかに前回より長く、関係無いセリフも足して笑いを誘っていた。

(未来クイズ、一番手が上がった人が正解になるシステムか?
ディズニーランド、USJ江戸東京博物館をもじった火星の人気施設で、
江戸東京博物館が一番人気は解せんぞw)


ラストの科学者兄弟の恐竜のシーンも、
セリフ無しだけど前回と違う気がしたなー。

あと、紅白でのバンド演奏、ドラムの人が大根をバチ代わりにしてたけど、
1回目の時は普通にバチだった気がするんだよなー。
気のせい率もとことん高いが。


バンドの3人が再開するシーンも、
女装ベースがすっとぼけるやり取りが長めだった気がする…




曲も2回目になると、
「あ、こここんなに上手く歌詞ハメしてんのか!」
とか、ただ単にヒップホップっぽい曲だなーと思ってたのも、
「あーここに江戸要素あったんか!」みたいに感じることがあり、
非常に上手い選曲であることが感じられた。
まあ、好きなタイプの曲では無いのは間違いないが…



エンディングの『アンビリーバーズ』によるダンスも、
1回目はあんまり合わないなーと思ったけど、
2回目はバッチリ感動出来た事もあり、
ポジティブな感情で楽しめました。



〇客層

いつにも増して男性が多い気がした。
梅棒の人気なら分からんでも無いが、それでも多すぎだなーと思った。
考えらえるのは、乃木坂人気って事か?!
渡辺みり愛さんがどれほどの人気なのか分からないけど、
集客にはバッチリ貢献してくれたように感じた。
特に初見と思われる男性2人組が
「もう1回見たい、グッズも買いたい」と絶賛してたのに、
思わずガッツポーズ。
こうやって梅棒初見を増やしてくれるのは非常に価値があるからさー。




〇開演前BGM

ゴールデンボンバー『タイムマシンが欲しいよ』
PUNPEE『タイムマシーンにのって』といった、
タイムマシーン関連の曲が使われてました。
ひょっとしたら、この劇中で使われる予定の没曲か?
という思いも馳せつつ、梅棒さんは色んな曲知ってるなーと感心。




勝手にシンドバッド

曲の大サビ前間奏あたりで、ランボルギーニがどうとか、
テスタロッサがどうとかいう台詞が入る。
劇中の声ではない、桑田さんの声っぽかったので、
元々の音源にそういうのがあるのかと思って聞いてみたが、それらしいものはなく。
ググって見たら、ライブ音源でこういう事を言ってるバージョンがある模様。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q13157922508?__ysp=5Yud5omL44Gr44K344Oz44OJ44OQ44OD44OJIOODqeODs%2BODnOODq%2BOCruODvOODiw%3D%3D

テスタロッサとかランボルギーニとかいう名前は、ここから取っていたのか?!
というか、風桶の初回公演が2016年1月で、この質問が2016年4月だから、
直後ってわけじゃないけど、梅棒観た人が質問したんじゃないかと思うぞこれw
俺もちゃんと覚えてるわけじゃないが
「そんな事しらねえよ!」みたいなのもあったもん。






そんなところかなー。
2回目に見て感動はありましたが、1回目はそんなでもなかった、というも正直な所。
日数も経って感動も薄れてきてるし、歴代公演では下の方かな。
2/3消化してからのカッコよさ、爆発力、歌のエモーショナル感などは相当。
そこだけのためにもう1回見たさはありますね。